火を育てているうちに ガラスがじわじわ白く曇って 炎が見えにくくなる
拭けば一時は澄むのに しばらくするとまたモヤが戻ってくる
せっかくの炎の表情を楽しみたいのに 視界が遮られて残念な思いをしたことはないでしょうか
この記事では 薪ストーブのガラスが曇る仕組みを整理し
その上で拭かずに澄んだ視界を保つための焚き方と日々の手入れをまとめます
曇りの正体は 水分とタールの付着 そして空気不足
薪が十分に乾いていないと 水分が蒸発して水蒸気が増え 温度の低いガラス面で微細な水滴となって白く見えます
同時に 不完全燃焼で生じるタールや煤が ガラスに薄い膜として積もり 白濁や茶色い曇りの原因になります
燃焼室の温度が低いまま 空気量が足りない状態で焚くと タール生成が加速します
初期昇温が遅い 薪が太すぎる 投入しすぎる あるいは空気を早く絞り過ぎると 典型的に曇ります
ストーブ側の仕組みも影響します
多くの機種はエアカーテン いわゆるエアウォッシュで ガラス内面に沿って下向きの薄い気流を作り 汚れを防ぎます
吸気経路が詰まっていると このカーテンが弱まり 曇りやすくなります
煙突のドラフトが弱い日や 立ち上げ直後は ガラス面の空気の流れが不安定になりやすいです
ガスケットが劣化して漏気がある 二次燃焼孔が詰まっている こうした要因も視界悪化に直結します
拭かずに澄ませる 焚き付けからの運転の流れ
乾いた薪を使うことが大前提です
含水率は目安として18%以下を確保します
割ったばかりの断面で計測し 迷ったらもう一段細く割って乾きを稼ぎます
着火は細い焚き付けを多めに 高い空気量で短時間に温度を上げます
窓の上端からガラス面に沿って強い上昇気流が生まれると エアカーテンが機能し始め 曇りが出にくくなります
最初の10〜20分は吸気を絞らず 炉内温度と煙突のドラフトを確立します
本薪の投入は「少量をこまめに」へ切り替えます
太くて水分の残る薪を一度に多く入れると 温度が落ちてタールが一気に出ます
炎が勢いよく立っているタイミングで 1〜2本を追加し 炎を消さない運転を意識します
ガラス面を冷やさない配置と積み方を選びます
薪をガラスに近づけすぎると 部分的に水蒸気とタールが集中します
薪の樹皮同士を向かい合わせず 皮面は上に逃がし 年輪側を炎に向けると タール分の直撃を抑えられます
炉床の空隙を確保し 下から空気が抜ける「井桁」または「北欧積み」で 立ち上がりの通風を良くします
環境と設備で曇りにくさを底上げする
煙突のドラフトを安定させます
外気温が高い日 無風や逆風の日は曇りやすくなります
着火前に煙突を軽く温める目的で 小さな着火材で先にドラフトを作ると 立ち上がりの白煙とガラス曇りが激減します
必要に応じてドラフトメーターで常用域を把握し 煙突長や断熱仕様を見直します
灰管理をこまめに行います
灰は断熱材として有効ですが 多すぎると吸気と燃焼床の通風を妨げます
拭かずに済ませるためのガラスお手入れ習慣
冷えたガラスに ほんの少量の灰を湿らせた布で円を描くように拭くと アルカリ性でタールがよく落ちます
仕上げは水拭き から拭きで透明度を戻します
強い化学クリーナーはガスケットや塗装に触れると傷むため 養生してから限定的に使います
定期的に薄い被膜をリセットしておくと 次回の曇りが付きにくくなります
ガスケットと吸気経路の点検をシーズンイン前に行います
扉の紙片テストでシール性を確認し 緩い箇所は交換します
二次燃焼孔やエアウォッシュのスリットに詰まりがないかを確認し 必要なら分解清掃します
樹種と薪状態にも気を配ります
針葉樹のヤニは立ち上がりに勢いをくれますが 低温運転ではタールが増えます
広葉樹主体で針葉樹を点火ブースターに混ぜる という使い分けがガラスには優しいです
樹皮が厚い薪はタール源になりやすいので 可能なら剥いで使います
よくある曇りの落とし穴とリカバリー
就寝前に長時間燃焼を狙って 早い段階で吸気を絞り切ると 一晩で茶色い膜がびっしり付きます
最後の追加投入は細めを控えめにし 二次燃焼が続く範囲でゆっくり絞るに留めます
朝 起き抜けは最小の焚き付けでガラス面を温め 付着した水分を蒸散させてから通常運転に戻します
雨の日は室内湿度が上がり 炉内温度が同じでも曇りやすくなります
着火からの前半に風量を多めにし 薪の量を控えめにするだけで 付着が目に見えて減ります
それでも曇るときに疑うポイント
含水率が高い可能性があります
割った断面で再計測し 18%を超える場合は乾いた薪に切り替えます
煙突の目詰まりや曲がり過多でドラフトが不足しているかもしれません
シーズン中でも煤量を点検し 早めのスイープを検討します
扉の歪みやヒンジのガタで エアカーテンの流路が狂っている場合は 調整または部品交換が必要です
おわりに
薪ストーブのガラスを曇らせない鍵は 乾いた薪 高めの炉内温度 安定した吸気という三点に尽きます
立ち上げを急ぎ 適量をこまめに追加し 二次燃焼が踊る炎を維持する
この基本が入れば ガラスはほとんど拭かずに澄み続けます
炎の表情がクリアになると 立てる薪の選び方も 自然と上達していきます
今夜の一焚きから 曇らない運転を試してみてください
