薪ストーブの火が、よく乾いた薪で立ち上がる瞬間ほど気持ちのいいものはありません
ぱちぱちと小気味よく弾け、炎がスッと伸びて煙が薄い
逆に、水分を抱えた薪は、火付きが悪く、すすが増え、煙突のメンテナンスも難しくなります
では、今手元の薪が「含水率18%以下」かどうか、どう確かめれば良いのでしょうか
今日は、含水率計の正しい使い方から、割った断面の見方、耳と手でわかる乾燥のサインまで、写真の比較を交えながらお伝えします
含水率計は「最後のひと押し」
まずは数値で確かめる方法から
ピン式の含水率計は家庭用に最も普及していますが、使い方にはコツがあります
計測は必ず「割ったばかりの新しい断面」にピンを深く刺して行います
表面は思いのほか早く乾くため、外皮に近い部分で測ると実際より低い値が出がちです
私は一本につき、芯に近い位置を2〜3点測り、平均を取るようにしています
気温が低い屋外で使う場合は、本体と薪の温度差で表示がぶれることもあるので
計測前に薪を日陰にしばらく置いて温度を馴染ませると安定します
数値の目安はシンプルです
ストーブに安心して使えるのは含水率18%以下
18%前後に収まっていれば、火付き、火持ち、煙の少なさのバランスがとても良い
25%を超えると着火で手こずることが増え、30%を超えると明らかに煙とすすが増えます
含水率計は万能ではないものの、最後の背中を押してくれる頼りになる相棒です
濡れたように光る年輪の間は、数値も高めを示します
中央の心材に近いほど乾きが遅いので、このあたりを狙って計るのがコツです
割った断面は、乾燥の履歴書
数字だけでなく、木口の表情も雄弁です
割った断面を覗くと、乾いた薪は年輪の色が均一に落ち着き、触れるとサラッとしています
指で軽くこすると粉を引くような感触があり、樹液のぬめりは感じません
年輪の間に髪の毛ほどの細い割れ(ヘアラインクラック)が走っていれば、内部まで乾燥が進んだサイン
逆に、まだ湿っている薪は、年輪の濃淡がはっきりし、触れるとしっとり
指先に冷たさが残り、鼻を近づけると生木の青い香りが強く立ちます
特に広葉樹の太い玉を割った時、中心部の色が濃くて重たい手応えがあるなら、乾燥は道半ば
もう一度、風が通る場所で立て掛け、雨を避けて数週間から数カ月、季節に応じて追い乾燥させるのが吉です
音は嘘をつかない
薪同士を軽く打ち合わせた音は、乾燥具合を見分ける古典的な方法です
よく乾いた薪は「コーン」「カン」と澄んだ高めの音が返ります
密度がありつつ内部が乾いて共鳴するからです
湿った薪は「ドス」「ボト」と鈍く短い音
内部の水分が振動を吸ってしまうため、音が前に飛びません
夜更けに外で鳴らすのは控えたいものの、日中であれば、数本を持ち替えながら音の違いを聴き比べると、耳がすぐに慣れてきます
重さには「理由」がある
手に取ったときの重さの違いは、写真より雄弁です
乾燥前と乾燥後、同じサイズなら、乾いた薪ははっきり軽い
特に針葉樹では違いが顕著で、片手で持ち上げた瞬間にわかります
広葉樹でも、比重の高さに惑わされないよう、同一樹種・同寸で比べるのがコツ
私はシーズンの最初に一本、基準になりそうな薪を選んで「これより軽ければOK」と手の記憶に刻んでおきます
台所の秤でいくつか計ってメモしておくと、次の年に役立ちます
割れは「乾燥の足跡」
木口(年輪が見える端面)に放射状の割れが出るのは、乾燥が進んできた合図
ただし、割れの有無は樹種や割り方の影響も受けます
太い薪ほど割れが出やすく、細割りだと割れが少なくても十分乾いていることがある
表面の大きな亀裂よりも、断面全体に細かな割れが均等に入っているかがポイントです
割れだけを唯一の判断材料にせず、含水率計、音、重さと合わせて総合で見るのが安全です
中心から外へ細いひびが何本も走り、表面は白っぽく粉をふいたよう
指で弾くと軽やかな音が返ります
実践の流れ:一本で三度確かめる
私がよくやる手順はシンプルです
まず一本を選んで割り、断面の色と手触りを確認
次に含水率計で芯に近い場所を数カ所計り、平均が18%以下か見る
最後に、同じ薪を乾いた別の薪と軽く打ち合わせ、音で答え合わせ
三つが揃って「乾いている」と言えば、その束はたいてい良い状態です
どれか一つでも首をかしげる兆しがあれば、迷わずもう少し寝かせます
乾燥を早める置き方のヒント
地面から浮かせ、風上から風下へ抜ける向きで積むと、乾燥は目に見えて速くなります
直射日光は味方ですが、雨は天敵
上面だけでもしっかり庇をつけて、水が当たらない環境を作る
樹種や割り方にもよりますが、春から始めれば秋には18%前後まで落ちます
冬切り・春割り・夏越しは、昔からの理にかなった方法です
おわりに
乾いた薪は、ストーブの性能を最大限に引き出し、煙突掃除の手間も減らし、炎を見る時間をもっと豊かにしてくれます
含水率計で数値を押さえ、割った断面で確かめ、音と重さで仕上げる
写真で見る違いは、じきに手と耳の記憶になります
今季の薪、18%を切っているかどうか、ぜひ今日の一本から確かめてみてください
燃える炎は、準備の良さに正直です
